アカペラのマイク本数と立ち位置|ライブのセッティング・返し・ボイパ用マイク【シート無料】
アカペラのセッティングで迷うのは、マイクを何本頼めばいいのか、誰がどこに立つのか、返しは何台いるのかの3つです。楽器がないぶん簡単そうに見えますが、実は逆で、客席に届く音はすべてマイクから出ます。6人組なら6本のマイクが同時に開いている状態で、バンドのボーカル1〜3本とは事情がまったく違います。結論から言うと、マイクは1人1本、減らすならコーラスだけ。この記事では、4人から8人以上までの人数別のマイク本数、ボイパとベースのマイクの扱い、立ち位置と返しの置き方、リードが回る曲の伝え方、会場ごとのマイクの上限までを、そのまま印刷して埋められるA4シート(無料・PDF4ページ)つきで解説します。
結論:マイクは1人1本。減らしていいのはコーラスだけ
アカペラのライブで会場に伝えることは、突き詰めると3つです。楽器のセッティングがないぶん、この3つの精度がそのまま当日の音になります。
- マイクは人数分(1人1本)——足りなければ、コーラスを2人で1本まで減らす
- 立ち位置はマイク番号で——下手から①②③…と振って、パートを書き添える
- 返しは2人に1台——要望はグループで1つにまとめてから伝える
この記事の内容は、セット図(ステージを上から見た配置図)の書き方としてはいちばん簡単な部類です。アンプもドラムもないので、描くのはマイクと返しだけ。そのかわり、誰のマイクがどれかが分かるように書くことが大事になります。
人数別のマイク本数——4人から8人以上まで
まず本数です。アカペラの編成をリード1人・コーラス◯人・ベース1人・ボイパ1人に分けて考えると、必要な本数と、足りないときに減らせる限界がはっきりします。
| 人数 | 1人1本なら | 足りないとき(最小) |
|---|---|---|
| 4人 | 4本(Lead・Cho・Bass・VP) | 4本のまま。共有できる組がない(ボイパなしの4声なら3本) |
| 5人 | 5本(Lead・Cho×2・Bass・VP) | 4本(コーラス2人で1本) |
| 6人 | 6本(Lead・Cho×3・Bass・VP) | 5本(コーラス3人で2本) |
| 7人 | 7本(Lead・Cho×4・Bass・VP) | 5本(コーラス4人で2本) |
| 8人以上 | 人数分。返しは4台以上 | コーラスは2人で1本まで。それ以上まとめるならスタンドで面で拾う(合唱の形) |
会場のマイクが足りないときの形を図にすると、こうなります。5人組でマイクが4本しかない例です。
共有するマイクは、ハンドで回し合わずにスタンドに立てるのが基本です。持ち替えのたびにノイズが出ますし、2人の口からの距離がずれると、どちらか一方の声だけが大きくなります。スタンドの高さは、2人の口のちょうど中間に合わせます。
ボイパとベースのマイク——1人1本、ボイパは別chで
減らしてはいけない3人のうち、扱いが特別なのがボイパ(ボイスパーカッション)とベースです。どちらも「声」ですが、PAから見るとドラムとベースに近い存在です。
| パート | マイクの例 | 持ち方・距離 |
|---|---|---|
| リード | 会場のSM58で十分。持ち込むなら同じ型を | 口元から数cm。張るところは少し離し、ささやく所は近づける |
| コーラス | SM58。共有するならスタンドに立てる | 共有は2人まで。2人の口から同じ距離に立て、片方に寄らない |
| ベース | SM58でも出る。AKG D5 を使う人も多い | 口に近づけるほど低音が太くなる(近接効果)。離すと急に細くなる |
| ボイパ | SM58/Beta58A/e935 など。持込も多い | 1本・別ch。グリルを手で覆いすぎない(ハウリングしやすくなる) |
ボイパを1本・別chにする理由は、PAがボイパのチャンネルだけ低音とアタックを別に作るからです。キックの低音やスネアの破裂音は、ほかの声と同じ設定では出せません。コーラスと1本を共有すると、ボイパに合わせればコーラスがこもり、コーラスに合わせればボイパが細くなります。
ベースは、マイクに口を近づけるほど低音が太くなる近接効果を使って音を作ります。定番のSM58は、近づけたときに低音が出すぎないようあえて低音を抑えた設計なので、もっと太さがほしいベースの人には AKG D5 を選ぶ人も多くいます。どちらにしても、ベースは口とマイクの距離がそのまま音量と音色になるので、1人1本で自分の距離を保つことが前提です。
ボイパは自分のマイクを持ち込む人が多いパートです。持ち込むなら、図と一緒に出す表に「⑥ VP:e935(持込)」のように機種名まで書いておきます。ワイヤレスで持ち込むときは、ワイヤレスの周波数の申告も一緒に済ませてください。
立ち位置——横一列が基本、ベースとボイパは隣に
立ち位置は、横一列が基本です。客席に正対でき、PAから見ても誰がどのマイクかが分かりやすいからです。そのうえで、効くルールが3つあります。
- マイク番号は下手から①②③…——客席から見て左から順に振る。上手・下手は客席から見た向きです
- ベースとボイパは隣に——リズムの土台になる2人が、返しを通さずお互いの生の声で合わせられます
- リードは一歩前——リードを取る人が一歩前に出て、コーラスが半歩下がると、客席から誰が歌っているかが一目で分かります
人数や曲によっては、横一列以外の形も使います。
| 並び | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 横一列 | ライブハウス・学祭など、客席に正対したいとき | 端どうしの声が聴こえにくい。返しを両端にも置く |
| 浅い半円 | バラードで声を合わせたいとき・間口が狭いとき | お互いの口元が見えて合わせやすい。端の人は客席側へ体を開く |
| 2列 | 7人以上・奥行のあるステージ | 後列の声が前列の背中に当たる。後列は前列の間に立つ |
どの形でも、図に描くのはマイク(=人)と返しだけで足ります。記号の描き方はセット図の作り方・書き方の記号早見表と同じです。
返しは2人に1台——パートごとに欲しい音が違う
楽器がないアカペラでは、返し(足元のモニタースピーカー)が音程とリズムの基準になります。和音の土台であるベースと、リズムを刻むボイパが聴こえないと、ピッチもテンポも揺れ始めます。返しの台数は2人に1台が目安で、6人なら3台、少なくとも左右に2台は確保します。
そして、パートによって返しに欲しい音が違います。ここを一言ずつ書いておくと、リハの最初の1回が変わります。
| パート | 返しに欲しい音 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| リード | コーラスとベース(和音の土台) | 「リード:コーラス・ベース多め、自分は少し」 |
| コーラス | 隣のパートとベース | 「コーラス:ベース少し、全体は控えめ」 |
| ベース | ボイパと自分 | 「ベース:ボイパと自分を多め」 |
| ボイパ | ベースと自分 | 「ボイパ:ベース多め、自分は少し」 |
マイクの本数が多いぶん、ハウリングを起こしやすい癖も知っておくと安心です。
| 癖 | なぜ起きるか | こうする |
|---|---|---|
| 下に向ける | 歌わないとき、マイクの正面が床の返しを向く | 休むときも胸の前で上向きに持つ |
| グリルを覆う | ボイパが手で深く囲うと、後ろの音まで拾いやすくなる | 囲うのは音圧のため。音量は声で出す |
| 返しの正面 | 返しの音がそのままマイクに入る | 返しは左右の斜め前。本番の立ち位置でリハする |
会場のマイクに Beta58A のようなスーパーカーディオイド型が混ざっているときは、真後ろにも少し感度があるので、返しを真後ろではなく左右の斜め前に置くほうが安全です。返しそのものの頼み方は返し(モニター)とは、仕組みはハウリングとはにまとめています。
リード回しは「マイク番号」で伝える
アカペラならではの書き方が、リード回しです。曲ごと、ときにはAメロとサビでリードが入れ替わるので、PAはどの瞬間にどのマイクを上げるかを知っておく必要があります。アカペラのPA経験者は「Aメロで何番、Bメロで何番と、細かくセットリストの用紙に書いてもらえるとありがたい」と話しています。
| 曲順 | リード(マイク番号) | PAへの一言 |
|---|---|---|
| 1曲目 | ③ 全編 | 曲頭はボイパ⑥から(カウントなし) |
| 2曲目 | Aメロ① → サビ③ | ①は1番のAメロだけ |
| 3曲目 | ③。間奏で⑤ベースソロ8小節 | ⑤を間奏だけ上げてください |
| 4曲目 | ③+②のツイン(ラスサビ) | 曲後のMCは③が後ろのスタンドで |
ポイントは、名前ではなくマイク番号で書くことです。PAは当日はじめて会う6人の名前と顔を一致させられませんが、「③」なら卓のどのフェーダーかが一瞬で分かります。曲順そのものの書き方はセットリストの書き方にまとめています。
会場ごとのマイクの上限——ライブハウス・ホール・施設・路上
必要な本数が決まったら、会場に足りるかを確かめます。マイクの本数は、会場の機材で上限が決まるからです。実際に公開されている機材表や仕様から、場面ごとの上限を並べるとこうなります。
| 会場 | 上限になるもの | 実例 |
|---|---|---|
| ライブハウス | ボーカル用マイクと返しの台数 | 新宿SAMURAI:SM58×6+SM58S×1+Beta58A×4、返し6台、ワイヤレス5本(1本3,000円)。京都GROWLY:SM58×10、返し5台 |
| 公共ホール | ワイヤレスの本数(受信機のチャンネル数) | 横浜・ミズキーホール:有線のダイナミック24本に対し、ワイヤレスは6本まで。返し(はね返り)6台 |
| 施設・公民館 | 簡易ミキサーの入力数 | 5人のアカペラ:「ワイヤレス5本は混線が心配」→ 有線5本+簡易ミキサー2台(音響レンタル店の事例) |
| 路上・カフェ | 電池アンプのマイク入力 | Roland CUBE Street EX・BA-330 はマイクを挿せるXLR入力が2つ。5人ならミキサーを足す |
ワイヤレスは何本まで使える?
申込書や連絡のメールには、「有線6本・ワイヤレス0本」のように有線とワイヤレスを分けて書きます。「マイク6本」だけだと、会場がワイヤレスで準備して上限に当たることがあるからです。
学園祭の屋外ステージでは、マイクの本数に加えて電源と雨天の扱いも決めておく必要があります。屋外なら学園祭の野外ステージ配置図を、カフェや路上の投げ銭ライブなら投げ銭ライブとはもあわせて読んでください。
リハーサルでやる順番(時間が短くてもこの順で)
対バンのリハは、セッティング込みで1組20〜30分が目安です。アカペラは楽器のセッティングがないぶん大半を音出しに使えますが、マイクが6本あれば確かめることも6倍です。この順番で進めると、短い時間でも決めるべきことが決まります。
- マイク番号順に1人ずつ声を出す——①から順に。ボイパはキック→スネア→ハイハット→1小節
- 一番大きく歌う曲のサビ——ここで音量の上限(ハウリングしない最大)を決める
- 一番小さく歌う曲の頭——下限を決める。ささやきが客席に届くか
- 返しの要望をまとめて1回で伝える——パートごとに欲しい音を一言ずつ
- 本番の立ち位置で、リードが前に出る動き——返しの範囲から出ないか確かめる
アカペラ用セッティングシート(A4・4ページ)を無料ダウンロード
ここまでの内容を、そのまま印刷して埋めるだけのA4シートにしました。1ページ目が記入用(マイク番号とパートの表・立ち位置の図・返しと会場への確認・リード回し)、2ページ目が6人組の記入例、3ページ目がマイク早見表、4ページ目が会場ごとの上限と提出前チェック13項目です。登録不要・完全無料、印刷も配布も改変も自由です。
使う順番は3ステップです。① 3ページ目の早見表で人数に合う本数を決める → ② 1ページ目の表に、下手から①②③…とマイク番号・名前・パートを書く → ③ 立ち位置の図に番号を書き込み、リード回しを番号で埋める。この3つが埋まっていれば、当日マイクまわりで止まることはまずありません。マイクの回線を1本ずつ表にする書式は回線表(インプットリスト)の書き方にあります。
まとめ
- アカペラのマイクは1人1本。足りなければコーラスを2人で1本まで減らす
- リード・ベース・ボイパは減らさない。ボイパは別ch、ベースは口に近づけて低音を作る
- 立ち位置は横一列が基本。マイク番号は下手から①②③…、ベースとボイパは隣に
- 返しは2人に1台。要望はグループで1つにまとめてから伝える
- リード回しは名前ではなくマイク番号でセットリストに書く
- 本数は会場の機材で上限が決まる。有線とワイヤレスを分けて書き、路上は電池アンプのマイク入力(2つが多い)を確かめる


